高齢者の賃貸と孤独死問題:先入観を超えて①
「高齢者 賃貸」と検索すると、「孤独死」という言葉が関連検索に出てきます。この言葉は、大家さんにとって「空き部屋の入居希望者が高齢者ばかり」や「既にいる入居者が高齢化してきた」という問題を思い起こさせるかもしれません。
多くの大家さんや管理会社、不動産業者は、入居者の孤独死、特殊清掃、家財処分の問題について心配しており、その結果、孤独死の可能性が高い高齢者の入居を敬遠する傾向があります。しかし、孤独死の問題は本当に「高齢者のせい」なのでしょうか?
この記事では「高齢者への先入観」についてデータを交えながらお話しします。知らず知らずのうちに私たちの視界を覆っていた「先入観」を外した時、空室問題を解決する新たなビジネスチャンスが見えてくること、間違いありません。
高齢者=孤独死というイメージ
近年、外国籍やひとり親、性的マイノリティ、障害者、低所得者の方々は「住宅確保要配慮者」と呼ばれ、賃貸住宅を借りにくい状況にあります。特に、多くの人にとって身近であり、将来関わる可能性があるのが「高齢者の賃貸難民問題」です。
令和5年に国交省・厚生省・法務省の三省合同による「住宅確保要配慮者」のための検討会が開催されました。資料として提出された管理会社へのアンケートでも、半数以上が「家主の理解が得られず高齢者の賃貸住宅を斡旋していない」という結果でした。
また、2023年に発表された「日本賃貸住宅管理協会」の調査で、大家さんが各入居者に抱く「拒否感」について、下記の調査結果が発表されました。
■高齢者、障がい者、外国人…賃貸住宅のオーナーの入居受け入れに対する拒否感実情(2023年発表版)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c2fce913546f9f831ecc1b5d97de771fb0bfd85c
地域によって差はありますが、特に関西圏では「拒否感あり」という大家さんもまだまだ多くいらっしゃいました。しかし、この「拒否感実情」は「実際の孤独死データ」由来のものではありません。
「孤独死よりもこわい!大家さんが知っておきたい孤立死の実態」というコラムでもお伝えしましたが、「日本少額短期保険協会」が発行する「孤独死現状レポート(2022年11月版)」によると、孤独死者の平均年齢は「62歳」と、私たちが想像する「高齢者」よりも若い年齢でした。また、孤独死者の約半数は「20代~50代の合計数」と「現役世代」の方々で、実際の孤独死は高齢者だけが引き起こす問題ではないというデータが存在しています。
人は過去の経験による思い込みから、無意識のうちに「合理的ではない先入観」を抱いてしまいがちです。これを心理学用語で「認知バイアス」と呼びます。現在、大家さんの多くに見られる「孤独死は単独世帯の高齢者が起こす」という考え方は、年齢が高い=死が近いという「認知バイアス」が掛かっているものです。
報道やネット情報でも高齢者の孤独死に関するニュースをよく見聞きするというだけで、「高齢者こそ孤独死する確率が最も高い」と思い込んでしまう認知バイアスの一種です。しかし、実際の統計と一致していないことは、前述の孤独死現状レポートの結果から分かります。