ビジネスリスクをビジネスチャンスに変える技①

住宅難民問題
2024/03/13
文:藤掛千絵

「高齢者、賃貸」と検索すると、検索候補に「孤独死」という言葉が出てきます。
この言葉は、大家さんにとっては「空き部屋の入居希望者が高齢者ばかり」や「既にいる入居者が高齢化してきた」という問題を思い起こさせるかもしれませんね。

多くの大家さん、そして管理会社・不動産業者さんなど「貸す」方々は、入居者の孤独死・特殊清掃・家財処分の問題について心配しており、その結果、孤独死の可能性が高い高齢者の入居を敬遠する問題が起こっています。
しかし孤独死の問題は本当に「高齢者のせい」なのでしょうか?

この記事では「高齢者への先入観」についてデータを交えながらお話しします。
知らず知らずのうちに私たちの視界を覆っていた「先入観」を外した時、空室問題を解決する新たなビジネスチャンスが見えてくること、間違いありません。

高齢者=孤独死というイメージ

近年、外国籍やひとり親であること、性的マイノリティ、障害者、低所得者の方々は「住宅確保要配慮者」と呼ばれ、賃貸住宅を借りにくい状況にあります。
特に、多くの人にとって身近であり、将来関わる可能性があるのが「高齢者の賃貸難民問題」です。

令和5年に国交省・厚生省・法務省の三省合同による「住宅確保要配慮者」のための検討会が開催されました。資料として提出された管理会社へのアンケートでも、半数以上が「家主の理解が得られず高齢者の賃貸住宅を斡旋していない」という結果でした。

また、2023年に発表された「日本賃貸住宅管理協会」の調査で、大家さんが各入居者に抱く「拒否感」について、下記の調査結果が発表されました。

■高齢者、障がい者、外国人…賃貸住宅のオーナーの入居受け入れに対する拒否感実情(2023年発表版)
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c2fce913546f9f831ecc1b5d97de771fb0bfd85c

地域によって差はありますが、特に関西圏では「拒否感あり」という大家さんもまだまだ多くいらっしゃいました。

しかしこの「拒否感実情」は「実際の孤独死データ」由来のものではありません。

「孤独死よりもこわい! 大家さんが知っておきたい孤立死の実態」というコラムでもお伝えしましたが、「日本少額短期保険協会」が発行する「孤独死現状レポート(2022年11月版)」によると、孤独死者の平均年齢は「62歳」と、私たちが想像する「高齢者」よりも若い年齢でした。
また孤独死者の約半数は「20代~50代の合計数」と「現役世代」の方々で、実際の孤独死は高齢者だけが引き起こす問題ではないというデータが存在しています。

人は過去の経験による思い込みから、無意識のうちに「合理的ではない先入観」を抱いてしまいがちです。これを心理学用語で「認知バイアス」と呼びます。
現在、大家さんの多くに見られる「孤独死は単独世帯の高齢者が起こす」という考え方は、年齢が高い=死が近いという「認知バイアス」が掛かっているものです。

報道やネット情報でも高齢者の孤独死に関するニュースをよく見聞きするというだけで、「高齢者こそ孤独死する確率が最も高い」と思い込んでしまう認知バイアスの一種です。
しかし実際の統計と一致していないことは、前述の孤独死現状レポートの結果から分かります。

藤掛千絵