「終活」で始まる新たな人生①

住宅難民問題
2024/03/27
文:藤掛千絵

「終活」とは、人生の終末期に備えて行うさまざまな活動を指す言葉です。この言葉は、2009年に「週刊朝日」で使われ始め、関連書籍のブームや新語・流行語大賞のトップテンに選出されるなど、広く普及しました。映画やドラマ、漫画のテーマにもなり、すっかりカジュアルに使われている「終活」ですが、具体的な方法や始め方については漠然としたままの方も多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは、「終活をしないと起こること」や「終活はここから始めよう」などをご紹介します。まだ自分には不要だと思っている方も、何から始めたら良いのか分からない方も、参考にしていただければ幸いです。

終活ってなんだろう?

終活という言葉には「自分の死後のことを考え、準備をする活動」という意味があります。具体的な活動内容としては「遺言書の作成」や「葬儀の計画」、そして「財産の整理」などが含まれています。終活を行う目的は「自分自身の意志を残す」と同時に「自分の死後、家族に負担をかけないようにする」というものです。

終活が広まった背景には、少子高齢化の進行や平均寿命の延びにより、65歳以上の高齢者が増加したことが挙げられます。20世紀初頭は、一組の夫婦に子供が多数生まれ、年老いた両親の介護や看取りを子供たちで分担できました。しかし、未婚率の上昇と少子化により、子供一人あたりの負担が増し、昔のように立ち行かなくなりました。こういった背景もあり、高齢者は周囲に迷惑を掛けないために最期を迎える準備をすることが必要事項である、という考え方が広がっていきました。

終活をしないと、どうなるの?

まったく一切の「終活」を行わない状態で亡くなった場合、予期せぬ事態に備える準備がないため、以下の問題が生じる可能性があります。

亡くなったことにすぐ気づかれず、遺体の発見が遅れた場合、腐敗や害虫の発生を招きます。結果、居室の清掃やリフォームが必要になることがあります。
賃貸住宅においては、相続人がいない・見つからない場合、部屋がそのままの状態で放置されることになります。さらに、故人の火葬を行う人がいない時は自治体が対応することになりますが、遺骨の扱いについても倉庫で保管されるなど、問題が生じることがあります。
孤独死が発生してから発見されるまでの時間は、平均して18日と言われており、この期間が長ければ長いほど遺体の損傷が進行し、室内に汚れや臭いが付着します。こういった汚れや臭いを除去するには、高額な特殊清掃やリフォームが必要です。このような状況は、物件のオーナーにとっても経済的な負担となり、また「事故物件」という噂が立つと物件自体の価値が下がる原因となります。

現代の日本ではこのような事態を避けるため、単身高齢者の入居を拒む物件オーナーも増えており、高齢者の賃貸住宅入居が決まらないという社会問題となっています。終活を行うことは、こういった問題を未然に防ぐためのものなので、自分自身だけでなく、社会にとっても有益な活動になると言えるでしょう。終活とは「自分の意志を尊重し、周囲に迷惑をかけないための大切な一歩」なのです。

■関連コラム:孤独死よりも怖い!大家さんが知っておきたい孤立死の実態
https://anshinplus.me/column/?cg=1

■参考ニュース:なんで私が「相続人」に? ”遺品部屋”の処分代、払えますか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231024/k10014235141000.html

藤掛千絵