孤独死はもう怖くない? 事故物件について正しく知ろう①

事故物件問題
2023/11/30
文:藤掛千絵

「事故物件」という言葉を聞いて、皆さんはどういうイメージを思い浮かべますか?
事件や事故で亡くなった人の怨念が残っているお化け物件? 怪談話のようなオカルトエンターテインメント?
事故物件をテーマにしたフィクションは世の中に多く溢れていますし、中には現実の事故物件情報を掲載し続ける有名なサイトもあるほどです。

現実の「事故物件化」は大家さんにとって絶対に避けたい結末の一つでしょう。
しかし、高齢者の孤独死=即、事故物件!というネガティブなイメージにとらわれて、高齢入居者の受入れ自体を敬遠していませんか?

実は事故物件としての告知義務が発生するには「一定の条件」があることをご存知でしょうか?
逆に言えば、その条件さえ当てはまらなければ、お持ちの賃貸物件で誰かが亡くなられても、事故物件にはならないのです。

今回は事故物件の定義について誰もが正しく理解できるよう、まとめていきます!

【事故物件の正式名称】

住む上で物理的な問題はないが、過去に凄惨な事件や自殺があった物件のことを、不動産業界では「心理的瑕疵物件(しんりてきかしぶっけん)」と呼びます。
「瑕疵」とはキズ、欠点、欠陥を意味する言葉で「心理的に欠点、欠陥がある物件」という意味になります。

事故物件という言葉が使われ始めたものは約30年前、平成の初め頃です。
由来ははっきりしていませんが、バブルで高騰した物件価格が、何らかの事故やトラブルで資産価値が極端に下がった時に「事故物件」と呼ぶ風潮が生まれたそうです。
「心理的瑕疵」を知らなくとも「事故物件」という言葉は知っている、という方は圧倒的に多いのではないでしょうか。

【国交省が発表したガイドライン】

2020年、国土交通省によって「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」が開かれました。
それまで事故物件、すなわち「心理的瑕疵物件」の明確な判断基準がなく、個人によって認識にバラつきがありました。中には、物件内で誰かが亡くなった=事故物件、という極端な認識もあったようです。
これでは、不動産取引上の適切な告知・取扱いが難しくなってしまいます。
何よりも問題だったのは、事故物件と騒がれることを恐れた家主が、入居者の孤独死に強い不安を抱いて、高齢者の入居を敬遠することでした。

このままでは住宅市場の活性化を阻んでしまうと、国交省が「心理的瑕疵」の適切な告知・取扱いについて検討し「ガイドライン」が策定されることになりました。

※参考/国土交通省ホームページ「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」
https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00029.html

藤掛千絵