特殊清掃について知る【前編】

孤独死問題
2024/04/11
文:藤掛千絵

「孤独死」は、一人で静かに旅立ち、その後数日経ってから発見される状況を指します。
死後、発見が遅れるほど部屋の清掃やリフォームが必要となり、次に住む方々にとっては心理的な障壁になります。こういったお部屋を「事故物件」と呼んでいます。
大家さんや不動産業者さんにとって「事故物件」は難しい問題です。人が亡くなった部屋として噂が立つことは、大きな損失につながるからです……。

と、ここまでは一般的な知識ですが、では実際の現場で何が起きているのでしょうか。
今回は改めて「孤独死」と「事故物件」の実情を見つめ直してみましょう。

孤独死が起きる状況について知る

一般的に「孤独死」は「高齢者」が最も多いと思われがちですが、いつ、誰に起こるかという予測はできません。
保険会社の調査による「孤独死現状レポート」によれば、孤独死者の平均年齢は62歳と想像よりも若く、また孤独死者の約半数は「20代~50代の合計数」です。

孤独死の死因として最も多いのは病死(全体の66.8%)ですが、自殺(9.8%)や、事故死(1.2%)というものもあります。加えて全体の22.1%の死因が不明となっています。
つまり高齢者だから孤独死する、若者だから死なない、とは一概には言えないことが分かります。

■第7回孤独死現状リポート https://www.shougakutanki.jp/general/info/2022/kodokushi.pdf

特殊清掃について知る①

孤独死が発見されず日数が経過した部屋では、いったい何が起きているのでしょうか。
孤独死現状レポートによれば、孤独死が起きてから発見されるまでの平均日数は「18日」です。また孤独死の4割は、発生から3日以内に発見されていますが、季節によっては遺体の損傷が進行し、臭いや害虫が発生することがあります。

■いま「一人暮らし」がヤバい…!孤独死が急増している日本で「死に方」が重要になっている“衝撃の”理由
https://gendai.media/articles/-/125802

上記のような特殊清掃の現場で働く人たちのレポート・コラムからは、日数が経ち、臭いや虫が発生している現場は、壮絶な状況であることが伝わってきます。
遺体の損傷だけでなく、すでに住居そのものが「ゴミ屋敷」になっていたり、増えすぎたペットの犬や猫で溢れているなど、故人が生前に抱えていた問題が重なることもあります。

■「17匹の犬が置き去り、助けて!」高齢者の孤独死で犬の多頭飼育崩壊が発覚→無事に保護「息絶えるぎりぎりまで食べ物もらっていたか」
https://x.gd/wqrTM

特殊清掃について知る②

実際の孤独死・特殊清掃現場の写真を掲載したニュース・コラムは多数ありますが、一般的には厳しいケースであり、視覚的にも生々しく、受け入れがたい側面もあります。
そんな写真とは異なる方法で、視覚的にも理解しやすく孤独死現場を再現する特殊清掃員もいます。

■決して人ごとではない最期:ミニチュアを通して孤独死を考える https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00736/

孤独死の現場をミニチュアとして再現しているのは、遺品整理人の小島美羽さんです。
ミニチュアを作り始めたきっかけとして、小島さんはインタビューの中で「孤独死や遺品整理が他人事ではなく、自分にも起こりうることを考えさせるため」と語っています。なぜミニチュアで再現するのかという疑問に対しては、リアルな写真では個人が特定されてしまう可能性もあり、ミニチュアで作成をしているそうです。イラストや文章よりも生々しいですが本物ではないので、作品を見た人が「ワンクッション置いて考えられる」とのことでした。
このミニチュア制作は、コンプライアンスに合った独自の表現方法として、孤独死のイメージを上手く伝える一助となっているのではないでしょうか。
小島さんは孤独死現場のミニチュアを通じて、亡くなる前に大切な人々とコミュニケーションを取ることの重要性を伝えています。

藤掛千絵