高齢者の犯罪率が高い理由とは?認知機能低下との関係を探る

高齢者見守り
2024/11/07
文:藤掛千絵

ここしばらく世間を騒がせている「闇バイト」事件ですが、若者の犯罪の陰で「高齢者の犯罪」や「再犯率」も増えていることをご存知でしょうか。

■88歳の後期高齢者が主犯格で…再犯を繰り返す「高齢者窃盗犯」が大増殖している! https://asagei.biz/excerpt/82347

上記は平均年齢76歳という高齢者グループが空き家に侵入しては窃盗を繰り返していたグループが捕まったというニュースでしたが、リーダーが88歳の「後期高齢者」だったという事実は衝撃でした。

実は近年、高齢者の犯罪・再犯率は、非高齢者よりも高い傾向にあると言われています。
65歳以上の高齢者の再犯率は約40.2%で、70歳以上の高齢者ではさらに高くなるとのこと。

本記事では、高齢者の犯罪率が高い理由を探りながら、私たちにも出来る対策はないかを考えていきます。

高齢者の犯罪率と再犯率の現状

警察庁のデータによると、65歳以上の高齢者による刑法犯の検挙人員は、平成元年(1989年)から令和元年(2019年)にかけて2.1%から22.0%に上昇しています。
この増加は「高齢化社会の進行」とともに顕著になっています。

高齢者による犯罪の主なものは「万引き」、「占有離脱物横領」、「暴行及び傷害」で、これらは高齢者犯罪の約7割を占めています(※占有離脱物横領とは、放置自転車や他人の落とし物を横領することです)。
特に万引きは上記の中で最も割合が高く、また再犯者が多いことも特徴です。


なぜ、高齢者は万引きを起こすのか。その背景には、いくつかの社会的・経済的要因が考えられます。

まず、経済的に困窮した高齢者が犯罪に手を染めるケースが増えています。
また、孤独や社会的孤立感が強まることで、心理的に不安定になり、犯罪に走ることもあります。

さらに、高齢者特有の心理的・身体的要因も無視できません。認知機能の低下や身体的な衰えにより、判断力や自制心が弱まり、衝動的な行動を取ってしまうことが増えます。

これらの要因が複合的に作用し、高齢者の犯罪率や再犯率の増加につながっているのです。

経済的困窮から……

高齢者白書(令和6年度版)によれば高齢者(65歳以上)の世帯平均年収約318万円です。
一方で、他世代を含む世帯平均年収は約546万円なので、高齢者世帯の年収が平均より低いことが分かります。

高齢者世帯の収入の内訳としては、公的年金、恩給が主となっており、これは平均207万円程度です。その他、稼働所得や財産所得がありますが、比較的少額です。
つまり、主な収入源は年金等ということになりますが、この年金だけでは生活が厳しいため、万引きをしてしまう高齢者が多くいると言われています。

平成28年に有識者によって調査された「高齢者の実態」によると、万引きなどを引き起こしたことがある高齢者のうち「生活保護を受給している高齢者」は全体の12.5%でした。
しかし、実際にはそこまで困窮していなくとも、本人の意識が「生活が苦しい」と感じてしまうため、徐々に精神的に追い込まれ万引きに走ってしまうケースがあるようです。

認知機能の低下や依存症から

経済的困窮以外の理由では、認知機能の低下(認知症)や、窃盗の依存症も挙げられます。
一般高齢者と比べ万引きなどを引き起こしたことがある高齢者は、認知機能の低下が疑われる解答が多い、という調査結果もあるほどです。

認知症の専門医が語る患者さんのケースを見ると、本人が気づいていない・無意識に行ってしまうケースが多々あります。
お腹が空いていた高齢者が、スーパーで会計前に食べ物を食べてしまう、会計用のカゴではなく、鞄やポケットに入れて忘れてしまうといった行動が、結果的に万引き行為と思われて、繰り返すうちに逮捕されるというケースです。

■参考資料
https://brain-gr.com/tokinaika_clinic/blog/dementia-discrimination/shoplifting-of-elderly/

また、窃盗に依存してしまう「クレプトマニア(窃盗症)」という病気もあります。
こちらは、物を盗む衝動が抑えられず、経済的困窮がなくとも窃盗を繰り返してしまう精神疾患で、家事などにストレスを強く感じている50代以上の女性に多いと言われています。

■参考資料 クレプトマニアとは
https://kmri.org/kleptomania.html

高齢者の万引きを抑止するためには……

経済的困窮には、経済的な支援が必要ですが、それに加えて特に効果的とされているのは、やはり高齢者を孤立させない、という方法が重要になってきます。

例えば経済的な困窮から万引きをしてしまう場も、高齢者本人が誰かに援助を求めることが出来ない、迷惑を掛けたくないという意識から、こっそりと窃盗してしまい、罪悪感にさいなまれるケースもあります。
「誰かに相談できる」環境が身近にあることで、万引きに走ることを抑止できます。

また認知機能の低下が原因で万引きをしてしまうケースには、定期的な健康チェック、認知症の兆候を見逃さないことが重要になってきます。親族や知り合いが近くにいない高齢者の場合は、普段から地域コミュニティ活動へ参加したり、行政の定期訪問サービスを活用することでも、極端な孤立を防ぐことが出来ます。

高齢者の犯罪抑止には、社会全体での取り組みが必要です。
まず、認知機能低下の早期発見と適切なケアが重要になるため、地域社会全体が協力し、高齢者の健康状態を見守る体制を整えることが求められます。

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藤掛千絵