行政も動き出した? 住宅確保要配慮者と呼ばれる人々①

住宅難民問題
2023/12/15
文:藤掛千絵

アパート経営において、入居者の管理に頭を悩ませるオーナーさんも多いことでしょう。
特に「一人暮らしの高齢者」については「孤独死」や「認知症発症」のリスクを敬遠して、お断りするケースもご経験があるのではないでしょうか。

安心プラス通信でもお伝えしておりますが、いま、単身高齢者が賃貸住宅を借りられないことが社会問題となっています。
65歳以上の高齢者の4人に1人が、年齢を理由に入居を断られた経験があると不動産会社のアンケートでも話題になりました。

今回は高齢者だけではなく、容易に賃貸住宅を借りられない人々について、行政が行っている施策について解説していきます!

【容易に賃貸住宅に入居できない人々】

皆さんは「住宅確保要配慮者」という言葉を聞いたことがありますか?
これは生活困窮者や高齢者、障害者、刑務所出所者、外国人など「住宅の確保が難しい」方々の総称で、既に社会問題として顕在化しております。
近年は「同性カップルの入居不可」という物件もあるため、LGBTQの方々も要配慮者の中に含まれています。

さて、この「住宅確保世配慮者」について、「円滑に住宅を借りられるように」と支援をするため、行政が2023年7月から検討会を行いました。
その名も【住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会】です。

検討会は国土交通省・厚生労働省・法務省の三省合同で行われています。
まず各省により、現状の説明があり、不動産協会や宅地建物取引業協会などが行ったアンケート結果が資料として提出されました。
「なぜ住宅確保要配慮者を受け入れられないのか」という理由について問題を洗い出すためです。
アンケート結果からは、下記のような不安感から、住宅確保要配慮者の方々を敬遠する、という事が分かりました。

高齢者→居室内での死亡事故に対する不安、認知症発症による近隣トラブル発生の不安
生活困窮者→家賃滞納の不安
外国人→言語の壁や文化の違いへの不安、連帯保証人が確保できるかといった不安
LGBTQ→近隣トラブルへの不安、長く住んでもらえないのではといった不安

つまり貸す側の「高リスクよりも現状の空室の方がマシだ」という心理から、住宅確保要配慮者という存在が出てきてしまうのです。

【機能が完全ではない施策の把握】

しかし、住宅確保要配慮者について議論されるようになったのはつい最近のことではありません。
2017年に国土交通省から発令された「住宅セーフティネット」という賃貸住宅登録制度がありますが、これもまた、住宅確保要配慮者を救うために考えられたものでした。

住宅セーフティネットとは、一定の基準に適合した住宅が登録されており、一般的な不動産業者から賃貸住宅を借りられない方々が入居を申し込める仕組みとなっています
しかし現在86万戸の登録がある中、直ぐに入居できる住宅や低家賃の住宅というのはまだまだ少なく、施策として機能しきれていないのが現状です。

また「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」や「残置物の処理等に関するモデル契約条項」という、家主側の心理的な不安を軽減する措置が作られましたが、
不動産業者の間でも認知度が低いことが明らかになり、まだまだ周知する必要があるということも分かりました。

■行政も動き出した? 住宅確保要配慮者と呼ばれる人々②へ続く。

藤掛千絵