高齢者の命を守る!ヒートショック防止のための賃貸住宅改善ガイド

孤独死問題
2024/11/19
文:藤掛千絵

11月も下旬になり、気温が下がってきました。
寒くなってくると増加するもの……それは、高齢者のヒートショックによる事故です。

参考資料:冬に増加 ヒートショックに注意! 入浴中の事故 救急要請の約8割が高齢者《福島・郡山消防本部》
https://news.yahoo.co.jp/articles/bcc9fc9e08e81d15ea9e4fd0a092f75db8b11191

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象です。高齢者は特に体温調節機能が低下している傾向にあるため、ヒートショックのリスクが高まります。

この記事では、高齢者の入居者の命を守り、孤独死等を起こさないため、賃貸住居のオーナーが取るべき具体的な対策について解説していきます。

ヒートショックとは?

近年、目にすることが増えた「ヒートショック」とは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象を指しています。
特に冬場、暖かい部屋から寒い浴室やトイレに移動する際に発生しやすくなり、高齢者にとっては重大な健康リスクです。

ヒートショックは、温度差によって血管が急激に収縮・拡張することで引き起こされます。例えば、暖かいリビングから寒い浴室に入ると血圧が急上昇し、心臓に負担がかかります。
高齢者は特に体温調節機能が低下しているため、温度変化に対する適応力が弱く、また血圧の変動に対する耐性も低くいので、ヒートショックの影響を受けやすいのです。
さらに持病を抱えている場合や、薬を服用している場合もリスクが高まります。

ヒートショックの主な症状には、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れなどがあります。
重症の場合は意識を失ったり、心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことも…。


【特にヒートショックが起りやすい環境】として、下記が挙げられます。

1. 冬季の寒冷地
冬季の寒冷地では、外気温が非常に低くなるため、室内と屋外の温度差が大きくなります。この温度差がヒートショックのリスクを高めます。特に暖房が効いているリビングから寒い浴室やトイレに移動する際、急激な温度変化が発生しやすくなります。

2. 断熱性能が低い住宅
断熱性能が低い住宅では室内の温度が安定しにくく、部屋ごとの温度差が大きくなります。これにより、暖かい部屋から寒い部屋への移動時にヒートショックが起こりやすくなります。特に古い建物では、このリスクが高まります。

3. 暖房設備が不十分な場所
暖房設備が不十分な場所では、室内の温度が十分に保たれず、寒さを感じやすくなります。特に浴室やトイレなど暖房が行き届いていない場所では、暖房をの効いた部屋との温度差が大きくなるため、ヒートショックのリスクが高まってしまいます。

築古の物件や寒冷地に建てられた物件では、上記のようにヒートショックが特に起こりやすくなります。高齢の入居者や単身者にお部屋を貸しているオーナーにとっては、孤独死等のリスクが増加する要因にも繋がるため、注意喚起が必要です。

改修の際にヒートショック対策を!

入居者への注意喚起も必要ですが、断熱性能が低い、暖房設備が古い等、温度管理が難しい住居の場合は、下記の方法での対策も有効です。

・室内温度を管理しやすく
浴室やトイレなど、特に温度差が生じやすい場所の温度を一定に保つこと……例えば、浴室暖房機の導入や、トイレ用の暖房便座を設置することで、急激な温度変化を防ぐことができます。

・断熱材や二重窓の導入
断熱性能を向上させるために、断熱材の追加や二重窓の導入も有効です。
これにより、室内の温度を一定に保ちやすくなり、ヒートショックのリスクを減らすことができます。特に古い建物では断熱性能が低いことが多いため、改修をした方が良いでしょう。

・暖房設備の見直しと適切な使用法
暖房設備の見直しも重要です。古い暖房設備ですと効率が悪く、温度管理が難しい場合があります。エネルギー効率の高い暖房設備に更新することで、室内の温度をより効果的に管理できます。また、暖房設備の適切な使用法については、入居者に説明することも大切です。

築古の物件に断熱材を入れる利点

上記の対策の中でも「断熱材」を入れることには多くの利点があります。

• エネルギー効率の向上
断熱材を導入することで、賃貸住宅のエネルギー効率が大幅に向上します。断熱材は外部からの寒さや暑さを遮断し、室内の温度を一定に保つ役割を果たします。これにより、冷暖房の使用頻度が減り、エネルギー消費を抑えることができます。結果として、光熱費の削減にもつながり、入居者にとっても経済的なメリットがあります。

• 快適な住環境の提供
断熱材を使用することで、室内の温度が安定し、快適な住環境を提供できます。冬季には断熱材が寒さを防ぎ、暖かい室内を維持するのに役立ちますし、夏も外気に影響されにくくなり、涼しく過ごせるようになります。また、断熱材は外部の騒音を遮断する効果もあり、さらに断熱性能の向上は建物の価値を高め、将来的な資産価値の維持や向上にも繋がります。

• 建物の耐久性向上
断熱材は建物の耐久性を向上させる効果もあります。断熱材が湿気を防ぎ、結露の発生を抑えることで、建物の劣化を防ぐことができます。これにより、建物の寿命が延び、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながります。

これらの利点からも築古の物件に断熱材を導入することは、快適な住環境を実現し、経済的なメリットを享受するための有効な手段と言えるでしょう。

賃貸住宅に使える断熱材への補助金、助成金

断熱材の導入をしたいが、費用の問題が……とお悩みのオーナーには、次のような補助金や助成金がお勧めです。

・次世代省エネ建材の実証支援事業
https://sii.or.jp/meti_material06/

概要: 高性能断熱材や蓄熱・調湿建材の効果を実証するための支援。
対象: 既存住宅の断熱改修。
詳細: 断熱材、窓、ガラスの改修に対する補助。


・断熱リフォーム支援事業
https://www.heco-hojo.jp/danref/index.html

概要: 高性能建材を使用した断熱リフォームに対する支援。
対象: 戸建住宅および集合住宅。
詳細: 断熱材、窓、ガラスの改修に対する補助。


・東京都の省エネ化・再エネ導入促進事業
https://www.tokyo-co2down.jp/subsidy/tintai_syouene_saiene

概要: 東京都内の賃貸集合住宅の断熱性能向上および再エネ設備導入を促進するための助成。
対象: 賃貸集合住宅。
詳細: 高断熱窓・ドア、断熱材の改修や省エネ診断等に対する経費の一部を助成。

参考リンク:国土交通省 住宅リフォームの支援制度
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000087.html

まとめ

ヒートショック対策だけでなく、バリアフリー設計や緊急時の対応策を整えることでも、高齢者が安心して暮らせる環境を提供できます。今後、ますます高齢の入居者のニーズは増えていくため、これらの対策は空室問題の解決にも繋がり、一石二鳥です。ぜひ、助成金や地域の支援サービスを活用しながら、効果的な対策を実践してみてください!


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藤掛千絵