賃貸物件にも断熱改革を──酷暑と住環境を見直して、孤独死0を目指す

孤独死問題
2025/06/25
文:藤掛千絵

6月下旬は一時的な雨が降ったものの、気温は依然として高く、体にこたえる日々が続いています。

近年は「酷暑」と表現されるのが当たり前になりつつあり、ニュースでも連日、熱中症への注意喚起がされるようになりましたが、実は熱中症以外にも酷暑に脅かされる健康リスクが多数存在しています。特に高齢者や持病を持つ方にとっては、命に関わる問題でもあります。 今回は、「高齢者にやさしい賃貸住宅づくり」や、「賃貸住宅の断熱リフォームによる健康対策」といった視点から、住環境改善と高齢入居者の孤独死を防ぐヒントをお届けします!

酷暑がもたらす健康被害──熱中症だけではない!

酷暑は単に暑いというだけでなく、体にさまざまな負担をかけます。
2025年、ダイキン工業株式会社の調査で、全国の64.6%の人が夏場の暑さで「熱中症ではないが体調不良や疲労感を感じたことがある」と回答しているとわかりました。同調査ではこの体調不良や疲労感を「熱あたり」と定義して、対策が必要だとしています。

また東京大学の研究では、暑さによる死者のうち、心臓や肺などへの負担による“隠れた死”が、熱中症死の約7倍にのぼることが示されています。特に高齢者や持病を持つ人々にとっては深刻な問題です。

高齢者だけではなく、妊婦の健康被害についても報告があり、高温の日が増えることで早産や妊娠高血圧症候群のリスクが上昇するという研究結果が公表されています。 他にも、暑さによる免疫力の低下や呼吸器疾患(喘息、COPDなど)の悪化も懸念されており、酷暑が幅広い健康リスクをもたらしていることは明らかです。

一方、冬になると話題になるのが「ヒートショック」。 急激な温度変化が引き起こす心筋梗塞や脳卒中など、こちらも命に関わる重大なリスクです。つまり、住環境は一年を通じて住む人の健康に影響を与えています。

戸建ては断熱等級を意識、では賃貸は?

注文住宅を検討する人々の間では、断熱等級(断熱性能)を重視する意識が高まっています。光熱費の節約だけでなく、快適さや健康への配慮からも「性能の高い家」を選ぶのが一般的になりつつあります。

一方、賃貸住宅ではどうでしょうか? 多くの物件では、築年数や建築方法によって断熱性能に大きな差があります。 RC造の集合住宅でも、窓がアルミサッシ単板ガラスであれば、外気の影響を大きく受けますし、ましてや木造の築古物件では、壁の断熱材が入っていない、すきま風が入る、というケースも少なくありません。

2025年4月以降に着工される新築やリフォーム工事では、賃貸住宅も断熱等性能等級4が義務化されましたが、既存物件においては断熱性能の向上はオーナー次第となっています。 また、省エネ性能の表示も任意のため、断熱性能の高い賃貸住宅を探すこと自体が難しいのが現状です。

日本の住宅は断熱性能が低い?

日本の住宅の断熱性能は、海外諸国に比べてかなり低いと言われています。
その一因として、「夏を涼しく過ごす」ことが重視されてきた日本の建築文化があります。 風通しを良くする設計が基本であり、近年まで「冬の寒さ対策」が後回しにされてきました。

加えて断熱や気密を高める設計が義務化されていなかったことも要因の一つといえます。
実際、日本の住宅には相当隙間面積(C値)の法的基準がなく、施工現場での気密処理や測定も一般的ではありませんでした。これにより、気づかないうちにすきま風が入り、冷暖房効率が悪く、住まいの快適性や健康面に大きな影響を及ぼしていたのです。

風通しの良い設計も、冷暖房効率の悪さも、20年前ならば特に気にすることはなかったかもしれませんが、昨今の極端な気温の変化で、熱中症やヒートショックなどの注意喚起がメディアで取り上げられることで「断熱性能」や「住環境」を意識する人が増えてきた、とも言えます。

「断熱リフォーム」という選択肢

気密性・断熱性を高めるリフォームには、いくつかの方法があります。
• 窓の断熱(二重窓・内窓設置、Low-Eガラスへの交換)
• 壁・天井・床の断熱材追加
• 玄関ドアの断熱性能向上
• 気流止めや隙間の封鎖

大まかな費用は、
• 内窓設置:1窓あたり3〜7万円程度
• 壁断熱:1部屋で10万〜30万円程度
• 天井断熱:10万〜20万円
• フルリフォームなら100万円超になるケースも

ただし、国や自治体の補助金制度を利用すれば、負担は大きく軽減されます。

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【まとめ】今こそ断熱リフォームを賃貸にも
冬にはヒートショック、夏には熱中症や持病悪化──気温変化が健康リスクをもたらす現代において、断熱性能の高い住宅は命を守る設備でもあります。
高齢者や子育て世帯に安心・安全な住まいを提供するためにも、断熱リフォームは賃貸住宅における新しい価値の基準となるでしょう。 すでに断熱リフォームに着手したオーナー様も多いかもしれませんが、「まだ」という方や、「オーナーにどう提案すべきか悩んでいる」管理会社の方もいらっしゃるでしょう。

このコラムが、断熱リフォームの重要性を改めて考え直すきっかけになれば幸いです。

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藤掛千絵