大家さんの6割が「高齢者入居に不安」──数字が語る現実と、動かぬ現場
「貸したくないわけじゃない。でも、貸せない」。
この言葉は、多くの賃貸オーナーや不動産管理会社の皆さまが日常的に抱えている葛藤を端的に表しています。年齢を理由に断ることへの後ろめたさと、予期せぬリスクへの備えが整っていないことへの不安。そのあいだで、判断が揺れ続けているのではないでしょうか。
2025年7月に発表された『大家さん白書2025』によると、65歳以上の単身高齢者に対して「心理的な抵抗がある」と答えた大家さんは63.0%にのぼりました。
主な理由として挙げられているのは、孤独死への不安(71.6%)、認知症のリスク(51.1%)、病気や怪我が起きた際の対応の困難さ(47.0%)です。
こうした数字が示しているのは、単に「高齢者に対する偏見」ではありません。
実際には、「万が一に備えられないことへの不安」や、「トラブルが起きた時に自分たちが責任を負えるのかどうか」といった、より現実的な懸念が根底にあると考えられます。
傾向は明らかです。対策も出揃っています。しかし……
近年、孤独死や認知症、緊急入院といった高齢者特有のリスクに対して、さまざまな民間サービスや公的制度が整備されてきました。
種類の豊富な見守りや駆けつけサービス、万が一の時の対応としての死後事務委任、残置物処理のガイドライン制定、孤独死リスクを補償する保険商品など、選択肢は確実に増えています。
加えて、サービスの価格も現実的になり、導入も比較的簡易になっています。
そのため、「対策ができない」という状況は、すでに過去のものになりつつあります。
それにもかかわらず、未だに大家さんの6割が高齢者の入居に不安を感じているという現実があります。
制度やサービスの存在と、それらが現場で活用されている実態との間には、依然として大きなギャップが残されています。
住宅セーフティネット法の改正が迫っています
2025年10月には、住宅セーフティネット法の改正が予定されています。
この改正では、見守り体制や生活支援機能を備えた「居住サポート住宅」という新たな区分が設けられ、登録物件に対して補助や助成金が交付される見込みです。
また、自治体レベルでも家賃補助、空き家活用支援、見守り導入費用の助成といった取り組みが広がりつつあります。
制度の数や種類という点では、過去と比べて格段に充実してきているのは間違いありません。
それでも、「制度を使える」という実感が、大家さんや不動産会社の皆さまの間にどれほど広がっているでしょうか。
申請手続きの煩雑さや自治体ごとの対応の違いが、現場での活用を妨げている要因となっています。
せっかくの制度が「使われないまま終わる」状況を、これ以上放置してはならないと感じています。
変わらぬ現実と向き合って
高齢者を含めた住宅確保要配慮者への取り組みは、2017年の住宅セーフティネット法の施行を契機に本格化してきました。
しかし2025年版の『大家さん白書』で再び「63.0%」という数字を目にしたときには、強い落胆を覚えました。
支援体制が整ってきた今だからこそ、数字に変化があってほしいと願っていましたが、理想と現実のあいだには依然として深い溝があることを痛感します。
高齢者が賃貸住宅市場において“選ばれにくい存在”であるという状況は、オーナー側の意識の問題ではありません。
むしろ、社会全体が高齢者の居住を支える仕組みを、十分に使いこなせていないことの反映だと考えています。
2040年には、日本人の3人に1人が65歳以上になるといわれています。
「高齢だから住めない」という風潮が当たり前になってしまえば、将来的に住まいを失う高齢者が急増し、社会不安を引き起こす可能性も高まります。
「貸す・貸さない」という二項対立から、「どうすれば安心して貸せるのか」という視点への転換が、いま求められています。
その鍵となるのが、支援制度の活用と、情報の共有ではないでしょうか。
最後に──この数字をどう受け止めるか
『大家さん白書2025』に記された「63.0%」という数字は、単なる統計データではなく、
高齢者が住まいを得ることの困難さを映し出す“社会の写し鏡”であるように思えます。
制度はある。支援もある。それでも状況は動かない。
この事実をどう受け止め、どこから動かしていくかが、これからの賃貸経営にとって重要な問いです。
「貸せない」という常識を、「貸すために整える」という行動へと変えていくこと。
その一歩が、誰もが年齢にかかわらず安心して暮らせる社会を築く土台になると信じています。
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