高齢者等終身サポート事業者ガイドラインが策定されました!

住宅難民問題
2024/06/20
文:藤掛千絵

2024年6月11日、厚生労働省は表題のガイドラインを正式に策定しました。
以前から「ガイドライン案」が出ていましたが、今回の策定では高齢者終身サポート事業が更に「健全な発展」を遂げることが強く望まれていることが分かります。

今回のコラムでは、上記のガイドラインが策定されるまでの背景や、ガイドラインに掛かれているポイントについて、簡単にまとめていきます。

高齢者を取り巻く状況は日夜変化している

近年、住宅を確保できない高齢者を取り巻く状況は目まぐるしく変化しています。
最近では「住宅セーフティネット法改正案」が2024年3月8日に閣議決定され、5月30日に衆議院本会議で可決・成立しました。人感センサーを設置した「サポート付き住宅」の創設など、住宅確保要配慮者の住まいを確保しやすい環境の整備が進められています。

少し前の2021年6月7日には、国土交通省及び法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を発表しました。
このモデル契約条項だけが理由ではありませんが、亡くなった後の家財処分や賃貸借契約の解除を代行する「死後事務」サービスは現在も増加傾向にあります。

また、介護施設や入院時の「身元保証」や、日用品の買い物などを行う「日常生活の支援」などの「高齢者をサポートする事業者」についても同様に増え続けています。

ガイドライン策定までの背景

超高齢化社会を迎えた日本では、高齢者向けのサポート事業者が増えるということは実に喜ばしいことですが、その傍らでトラブルも増加しています。

例えば、葬儀費等に充てるためと高齢者利用者から集めた多額の預託金を「公益財団法人」が私的流用するという事件がありました。

■身元保証等高齢者サポート事業に関する消費者問題についての調査報告(P1に記載)
https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2017/doc/20170131_kengi_houkoku1.pdf

他にも「身元保証」の契約金・解約金トラブルについては数多く報告され、2018年に100件だったのに対し、2023年には相談件数が302件にまで達しています。

■「身元保証」事業 契約めぐるトラブル相次ぐ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240421/k10014428781000.html#anchor-04

身寄りがいない・家族に迷惑を掛けたくないという高齢者や、認知機能の低下で判断力が下がっている等の「弱い部分」につけ込む悪質なケースは、後を絶ちません。

前述のような背景があり、高齢者が安心してサービスを利用できるよう、今回の「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が正式に策定されました。

ガイドラインには下記のように「死後事務」、「身元保証」「日常生活の支援」について
「事業の具体例」が記載されています。
また下記のような「ガイドライン違反の具体例」や、実際に「消費者生活相談に寄せられた内容」の記載もあり、かなり細かい内容となっています。

ガイドライン違反の具体例

記載されている違反の具体例は、まとめると以下のようになっています。

・不公正な契約手順
契約内容の不適切な説明や、消費者の利益を一方的に害する解約料条項の使用。

・サービス提供の管理不備
提供したサービスの時期や内容、費用等の記録の不備。

・前払金の不適切な管理
利用者から預かる前払金(預託金)を運営資金等と明確に区分せずに管理すること。

・判断能力が低下した利用者への対応不足
成年後見制度の活用が必要な場合の適切な対応の欠如。

他にも「成年後見制度の見直しについて」等の記載もあるため、事業者にのみ向けたのではなく、関係省庁自身も現状を把握し今後改正や調整をしていくための指標のようです。

ガイドラインに併せて、高齢者向けのパンフレットも作成されており、事業者・利用者の間へ早急に浸透していくことが望まれます。

■高齢者等終身サポート事業者ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/001262636.pdf

■「身元保証」や「お亡くなりになられた後」を支援するサービスの契約をお考えのみなさまへ
https://www.mhlw.go.jp/content/000390797.pdf

ガイドライン策定により、どうなっていくのか

ガイドラインを決めたところで、悪質な事業者や搾取される利用者は減らないのでは?というネガティブな見方もありますが、ガイドライン自体に「法的な強制力」がなくとも、
事業者に違反行為があった場合は以下のような対応・対策がとれます。

・消費者団体による差止請求を行うことができる
・契約を解除できる
・行政が事業者に対し指導を行う
・事業者へ民事訴訟を起こすことが可能になる
・事業者の信用が失墜し、結果として顧客を失う可能性がある

またガイドラインには「事業者の認定制度等の検討について」も記載があるため、ガイドラインを活用しない手はありません。

今後、ガイドラインが遵守されれば事業全体の透明性も高まり、高齢者も安心してサービスを利用できるようになります。社会全体の福祉の向上にも繋がっていくでしょう。

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藤掛千絵