和6年版高齢社会白書が公表されました~見守り付き居住サポート住宅に注目~

孤独死問題
2024/07/05
文:藤掛千絵

2024年6月21日に「令和6年版高齢社会白書(全体版)」が公表されました。今回はその高齢社会白書の統計データを見ながら、高齢者を取り巻く状況や関連するニュースをお伝えします。

■令和6年版高齢社会白書
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html

高齢化率の増加

日本の総人口は、令和5年10月1日時点で1億2435万人です。このうち、65歳以上の人口は3623万人で、総人口の29.1%が高齢者です。特にベビーブーム世代が令和7年に75歳以上となるため、日本人の約4人に1人が75歳以上となります。

高齢化率は増加していますが、医療制度の充実により高齢者の健康寿命も延びています。健康寿命とは「日常生活に制限なく健康な状態で生活できる期間」を示します。これにより労働力の確保が期待される一方、年金受給年齢の引き上げが懸念されています。

■「年金の出し渋りか…」“高齢者の定義”70歳に引き上げ!?給与は?年金は?街から様々な声
https://www.fnn.jp/articles/-/705709

高齢者の健康寿命が延びる一方で、少子化の影響により現役世代の割合が減少しています。現在、高齢者1人を現役世代(15~64歳)が2.0人で支える時代となっていますが、高齢者と現役世代が共に支え合える環境を整えるため、包括的な対策が必要です。

高齢者の単独世帯数の増加

65歳以上の一人暮らしは男女ともに増加傾向にあります。令和2年には男性15.0%、女性22.1%でしたが、令和7年には男性18.3%、女性25.4%に増加する見込みです。このまま増加すると令和32年には男性26.1%、女性29.3%になると予測されています。

単独世帯の増加により懸念されるのは「高齢者の孤独・孤立」問題です。男性は仕事を中心に社会的ネットワークを形成し、女性よりも友人や家族との交流が少ない傾向があります。そのため、定年退職後に孤立しやすいと言われています。

■高齢者の孤立は男性問題か
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreisha-koritsu/koreisha-koritsu-danseimondai.html

地域包括支援センターでは、男性高齢者向けに介護事業の一環として孤立防止やフレイル予防のための取り組みを行っています。

■胡散臭くもあり、ただの善意も感じさせられてちょっと面白そうなイベント『男の運動 おにぎり教室』が気になる
https://togetter.com/li/2389383

また、高齢者同士で交流するサークル活動もニュースで取り上げられました。

■高齢者寄ればスマホの知恵
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyoto/news/20240624-OYTNT50093/

同世代だからこそ分かる悩みを共有し、スマートフォン普及率に合わせた詐欺防止の注意喚起など、利点が多くあります。健康な高齢者ほど近所の人たちと交流しているという調査結果もあり、今後もこうした活動は増えていくでしょう。

■健康な高齢者は「近所の人たちと仲がいい?!」
https://x.gd/QynpG

高齢者の住宅と生活環境について

高齢社会白書によれば、将来的に「住み替えを検討したい」という高齢者は全体の約3割に上ります。特に60~64歳、65~69歳などの年代が低くなるほど住み替えの意向が強いようです。住み替えを行いたい理由としては、「健康・体力面で不安を感じるようになった」や「現在の住宅が住みづらい」といったものが多く、中には「買い物が不便になった」という回答もあります。

関連コラム ■東京周辺で「買い物難民」増加へ?注意すべき家と立地の特徴 https://news.livedoor.com/article/detail/26189285/

しかし、住み替えを検討していても「住み替えが実現できていない」という声も多く、その理由として「資金不足」が全体の33.1%を占めています。また、単身世帯の人からは「身元保証がなく、住宅を借りることができない」という声も上がっています。今後も単身世帯は増加するため、住み替えにおいても行政のサポートや支援が必要です。

令和6年版高齢社会白書のまとめ

高齢社会白書は、高齢化率の状況や行政が講じた高齢社会対策の実施状況を報告するものですが、令和6年版では「高齢者の住宅と生活環境」に特に焦点が当てられています。今年に入ってから「住宅セーフティネット法」の改正や「見守り付き居住サポート住宅」の創設など、住宅確保や孤独・孤立防止対策に関連する大きな動きがありました。高齢社会白書を併せて読むことで、高齢者の現状や課題がさらに理解できるでしょう。

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藤掛千絵